当サイトに遊びに来てくれるこたつむりさんの『浅葱レポート』です。
浅葱色と白で、シンプルに作ってみました。

2004年10月 3日 更新


時代劇TOP / 新選組を語ろう


偶然に、このセミナーがあると知って、参加しました。
会場を包んでいた、ふんわりとした暖かい空気を、
いくらかでも伝えたくて、文章にしてみました。
乱文ではありますが、
この文章で少しでも楽しんでくだされば幸いです。

公開セミナー「大河ドラマ新選組!」in高松レポート

『本日は暑い中お越しくださり、まことにありがとうございます。まだ定刻には少し時間がありますが、ただいまより開場いたします。ごゆっくりお進みください』 という、責任者らしき方の真心こもった御挨拶で始まったのは、04年7月16日にサンポートホール高松・第1小ホールでおこなわれた、NHK公開セミナー「大河ドラマ新選組!」

開場の挨拶をされた方に、気軽に『こちらは初めてですか?』と尋ねられたりと、ここに集った方の雰囲気は、終始おっとりのんびりしたものでした。(ちなみにこれ以降の会話は『ええ、岡山から来たものですから』『それはわざわざありがとうございます』『でも、綺麗なホールですね』『出来たばかりですからね。だから楽屋がどこだか、まだわかってないんです(笑)』というものでした。高松の方は大らかで人好きのする人が多いですね)

客席数312席のプロセニアムホールの約八割方を埋めるお客様が集まったようです。約半数が年配の方のようでしたが、若い方、それも保護者に連れられた小学生の姿も数ありました。男女比は、やや男性の方が多めだったような感じでした。この手の催しにしては珍しいなぁ、新撰組そのものに古くから関心がある方が多かったのかな。

会場となったサンポートホール高松・第1小ホール、一応は演劇も上演可能なホールのようですが、セミナーやシンポジュームといった議場対応にもされていて、右手の肘掛にサイドテーブルが仕込まれていました。

開演前は、事前に配られたパンフレット類を熱心に眺める方多数。NHKはかなり豊富な資料を用意してくれていました。サイドテーブルが大活躍。

さて、内容は以下↓のようなものでした。



<第1部> BSデジタルハイビジョンで見る「新選組!」

7/11放送の『直前 池田屋事件』の映像を使ったBShiの紹介。地デジじゃないのは、地デジ導入がまだ先だからですね。入社一年目の石橋アナと放送技術スタッフ登口さんの解説でしたが、・・・アナ頑張れ、登口さんの方が流暢なおしゃべりだったぞ。  残念なことに、このコーナーの主目的はBShiの紹介・・・説明が終わった時点でVTRも終了・・・もっと見たかったよ・・・  それに頑張りすぎて音響が大きすぎたようです。前の席に陣取っていた殿方、VTRが回るたびに耳を塞いでおられましたが・・・ありゃ、とうとうティッシュで耳栓・・・

そして、メインはこちら!



<第2部> 大河ドラマ新選組!トークショー

講 師  山村竜也氏(時代考証・歴史家)、青木信也氏(NHK番組制作局ドラマ番組部)
これからセットを変えますーと言って、イベントスタッフがテーブルと椅子をヨッコラショと持ってきてセッティングすると、はい、これからトークショーを始めますー・・・いやー、この手作り感が讃岐っぽくっていいですねぇ。

さて、このお二方のトークの模様をレポに纏めたわけですが、簡単なメモ(後で見直すと何を書いているか判別不能だったけど)を取りながら、お話を聞いていた訳です。

しかしながら、全てを書き留め&記憶できた訳ではありませんし、文章に起こすに当たっても、かなりの部分に私、こたつむりのフィルターがかかっています。そのことをお気に止めてお読みください。
*申し訳ありませんが、これ以降の文中では講師お二方の敬称は略して表記しました。

【監修のおしごと】
(まず、青木デスクが話題をふり、それに関して山村さんが答えていくという感じでお話は展開していきました。けど、ちょいと専門的に突っ込んだお話の詳細あたり・・・忘れてしまった・・・)

・まずは台本の台詞チェック
山村:現代的な言葉遣いが気になるとの声もありますが、脚本の台詞の単語全てをチェックしています。たとえば『この作戦には反対です』という台詞、幕末当時には『作戦』も『反対』もまだ使われていない単語なので、『作戦→作または企て』『反対→不承知』など、その当時に確実に使われていた言葉に全て置き換えています。

・ドラマの歴史背景もチェック
山村:きっちりとチェックしています。○○が××年にどこにいたか?という質問を受けることもしょっちゅうです。それから『新選組!』では、日付をはっきり判る脚本になっていますから、それにこだわった考証もしています。具体的には月の満ち欠けですね。この時代は陰暦を使っていましたから、毎月三日は決まって三日月で、満月は十五日しかありえないわけです。(目から鱗状態の場内からほーっと声にならない声がある中、ウンウンと頷く年配者の姿あり。その姿を見て陰暦が生活に密着していた時というのもそんなに昔のことじゃなかったんだと、感慨にふけった私であります) それが一度、出来上がったVTRを拝見したら、ありえない月の形をしていたのを見つけて指摘したことがありました。(どの場面?といったノリでまたまた場内騒然)
青木:(少し慌て気味)あ、これはオンエアでは流れていませんよ。直前で直しましたから、CGを使って。

・小道具もチェック
山村:ドラマの中に出てくる小道具類、衣装や(新選組の)旗もチェックしています。あと食べ物ですね。みかん、ありますよね。幕末当時だと、今より高価なものだったけれど、普通に食べていたものなので、みかんはOKですが、これがりんごだとNGになります。りんごは明治初期にならないと出回らなかったものですから。

【魅力溢れる俳優陣】
(ここらあたりから、お話の興が乗ってきたのか、お二方はトークに熱中状態・・・テンポが良かったのでかなりの部分がすっぽり抜け落ちてしまった・・・)

・四国ゆかりの佐之助
山村:四国ゆかりの隊士といえば、伊予松山の原田佐之助ですね。山本太郎さんの佐之助は、イメージぴったりですね。
青木:それで、あの佐之助の髪型は史実なんですか?
山村:いやー、佐之助については、肖像画とか写真も残っていないですから、なんともいえないんです。あれは『新選組!』オリジナルということで。(笑)

・主役、近藤勇
青木:香取慎吾さんの近藤勇、番組開始時には頼りないという声が多く聞かれたんですが・・・どうでしょう?鬼になって貫禄出てきたでしょう?(拍手まばら、アセる青木デスク)
山村:香取さんと役作りについてお話しことがあるんですが、どこで演技を切り替えるか的確に掴んでいるようでしたね。とても感の鋭い人です。
青木:慎吾ママやマヨネーズ好きの賑やかなイメージがありますが、とても真面目でおとなしい人。
山村:そう、びっくりするほど物静か。若い俳優さんが多いから、スタジオ前の控え室は賑やかなんですが、彼は一人で脚本を読み返しながら役作りしていることが多くて。(笑)
青木:競馬の話で盛り上がって、鴨役の佐藤浩市さんが(撮影でスタジオ入りするときに、控え室に残る山本耕史さんに)『トシ、あとちゃんと(競馬中継を)見とけ』なんて、皆でふざけてても一人ぶつぶつやってたり。(笑)

・司令塔土方歳三
青木:新選組を影で支えた土方歳三、とても人気がありますが、今回は脇にまわって影の部分を背負っていくんですが、土方を演じる山本耕史さん、とても格好いいですよね。(お隣や斜め前方に陣取っていた約六人ほどのマダム、熱心に拍手する、青木デスクまたビビる) 山村さん、大のお気に入りですよね、山本さんの土方は。
山村:ええ、今回は脇役で、新選組の汚れた部分を一人で被っていくんですが、その課程を実にに格好よく演じているのがとても素晴らしいですね。撮影現場でもみんなを引っ張るムードメーカーというかまとめ役で、そういうところも土方と重なるのもいいですね。
青木:山本さんはいつもギターを弾いてたり、手品をしていたり、まるで女性を口説くみたいに大人しい香取さんを口説いてたり。ついこの前、(香取さんの)携帯番号をついに聞きだしたとか、いないとか、飲みに連れ出したとか、いないとか。(笑)

・アイドル?沖田
青木:沖田総司を演じているの藤原竜也さん、とても綺麗ですけど・・・史実の沖田は?
山村:残念ながら小説でみられるような美少年といった記録は残っていませんね。でも、藤原君の演技はいいですね。浪士組に参加して上洛が決まったときに、月代を剃って待っていた場面があったでしょ、いい演技していましたね。 (もっとお二方ともコメントしていらしたんですが、記憶が・・・スイマセン)

・ミステリアス斉藤
青木:隊士の中で人気急上昇なのがオダギリジョーさんの斎藤一。山村さん、この斎藤もお気に入りだとか。
山村:ミステリアスでしょ、何を考えているのかよくわからない感じ。僕が斎藤に持っていたイメージ通りだったので、キャスティングを聞いたときはガッツポーズしました。誰が決めたんですか?
青木:え、みんなで決めました。(の割には慌てていた)
山村:斎藤に関しては、史実と違うじゃないかという声も寄せられているんです。左利きじゃないじゃないかと。でも、左利きの剣士というのはあるわけないんです。まず右で鞘から抜いて左手を添えるという、刀を使う手順は決まっていて、たとえ左利きの人でもこの手順は変わりません。だから、左利きの剣士というのはお話の世界だけの存在ですね。
青木:オダギリさんの殺陣は格好いいですよね。
山村:決め所を良く知っているというか、決めのポーズが綺麗ですね。やっぱりライダーの経験が生きているんでしょうか。(笑)
青木:ライダーをやっていたときは沖田を演じてみたいといっていたようですが、この前は土方を、といっていたようですよ。
山村:沖田から土方?なんで変わったんですか?
青木:ライダーの時は明るいヒーローだったけれど、その後経験を重ねて、陰のある役柄もこなすようになったからだと思いますよ。 (この会話の後半、ライダー&クウガの単語が飛び交っていましたが省略しました。(^_^;ゞ)

・人気急上昇の山南敬助
青木:それから人気があるのが山南さん。(ここで再び会場から熱ーい拍手!あれ、土方さんの時にも拍手をしていたマダムじゃあーりませんか〜) あ、山南さん、お好きですか。この前、トーク番組に出ていただいたときも、たくさんのファン、それも女性ばかりがいらしてびっくりしたんです。
山村:山南役の堺雅人さん、変な気取りがなくて穏やかないい人ですよね。
青木:いつも静かに本を読んでいて、時々、こう手をあごに持っていく、その仕草がそのまんま山南さんで。(笑) 今流行っているのが、永倉役の山口さんを中心に山南さんのまねをすること(笑)・・・山本耕史さんの『尊皇攘夷は(笑)〜(←山本さん演じる所の山南さんのものまね・・・の再現らしい)』
山村:(笑)あれ絶品です。(笑) (ちょっとちょっと・・・お二方とも、ものまねネタで盛り上がりすぎです(^^;)

・土佐の雄、竜馬
青木:四国というと、やはり土佐の坂本竜馬ははずせませんね。皆さん、竜馬の竜馬の土佐弁はどうでしょう?(会場しーん、またまたアセアセの青木デスク)・・・スタッフの間では好評なんだけど・・・(しょんぼりボソッと)
山村:江口さんの竜馬もはまり役ですね。
青木:えー、竜馬を暗殺したのは佐之助という説もありますね。これは?
山村:ええ、暗殺現場で『こなくそ』という言葉、伊予松山の言葉なんですが、これ、こちらでも使います?(例のマダムたちがサワサワ、一瞬使うのかと思わせる間のあとで『いえ、使いません』『あ、使わないんですか』と山村さん) えー、これを聞いたという証言を、竜馬と一緒にいて重症をおった中岡慎太郎が残しているんです。そこから、佐之助犯人説があるんですが、それよりも見廻組の佐々木只三郎の犯行である可能性のほうが強いですね。でも、100%確定という話という訳じゃありませんけれど。今回の三谷さんの脚本では確か・・・
青木:佐之助が竜馬暗殺現場で『こなくそ』という言葉を残す描写があります。でも・・・これから先は、見てからのお楽しみということで。(笑) このあたり、三谷さんが史実の隙間を埋めるような脚本を書いてくれました。

【そして、池田屋へ】
(ここらは、記憶ははるか忘却の彼方へ飛んでしまっているのですが・・・まず、池田屋の回を紹介するプレマップが流れました。大胆なカメラワークに例のマダム方の視線は釘付けで、口元に手を当てて画面に見入っておられました)

青木:えー、今回はセットも二階建てで、カメラもスポーツ中継で使うものを使って撮影しました。(もーっと詳しく熱っぽく語っておられたんですが、なにぶん分量が多くて覚えきれなかったデス、この部分は要約ということで・・・)
山村:僕、二階に登ってみました。狭かったですね。青木さん登られました?
青木:いえ・・・僕は・・・見ているだけで十分でした。高い所は・・・
山村:従来の新撰組だと、勇は池田屋の玄関を入った所にある大階段をダーッと登っていきますが、今回は玄関を入ると、正面の階段は登らずに土間をとっとっと行って、裏階段を上ります。
青木:裏階段をダーッと登ったんですか?あの階段を?
山村:いえ、この時点で勇は、浪士たちがいるとは知らないという設定ですから。そーっと、そーっと慎重に。(笑) でもこれだと、とても地味な展開になるので、プロデューサーさんに受け入れてもらえるか心配しましたが、今回はこの案を採用してもらえました。なので、映像では初めて、階段をそーっと登る勇が見られます。(笑) それと小説なんかだと、監査方の山崎が事前に池田屋に潜入して、手引きする描写がありますが、今回はこれもありません。二手に分かれて、一軒一軒しらみつぶしに浪士が潜んでいる宿を当たって行きます。
青木:この池田屋が終わると、隊士たちの別れになりますね。まずは山南さんの切腹があって、(マダムたちの『ええ〜ッ』という声がこだましました。またまた青木デスクはアセアセ)・・・あ、そうなんですよ・・・山南さん、殺さないでって助命嘆願もたくさん頂いたんですが、これは史実ですから仕方ないんです。(ここらあたりはマダムたちとの会話調) それに切腹の場面は、すでに収録も終わってまして・・・確か、この時は夜の二時半くらいまでかかったのかな。この日は収録のない俳優さんもみんな集まってて、収録終了後名残を惜しむように、みんなで朝まで飲んでいたようです。その後は、平助の脱退・・・あ、これ、史実だし・・・あの、『この先聞きたくないわ』という方、いらっしゃいます?(挙手があったようです) じゃ、この先は・・・(しかし、会場から声が上がった!)
客席中盤やや上手側にいらした老婦人:(先ほど挙手されたのはこの人らしい)いやそうじゃのうて・・・あの、新選組も〜、浪士も〜、そんのーじょーいでしょう〜?なんで争うーたんですぅ?(以下略、どうやらこの方、好奇心をおさえきれなくなって、つい手を挙げられたようです。(^_^;ゞ高松の方は大らかで人好きのする人が多いですね)
青木:え?!・・・あとで質問コーナーを設けようと思っていたんですが・・・じゃ、ここから質問コーナーということで・・・(笑)

【なしくずしに質問コーナー】
青木:じゃ、山村さん、お願いします。
山村:えー、尊皇攘夷について簡単に話すのは難しいんですが・・・(本当に難しかったので、記憶容量がパンクしました。)  (新撰組に対して思い入れの深い方が多くいらしたようで、史実とドラマの係わり合いに関する質問に傾向が偏っていました。結構あちこちの雑誌で見かける質問と重複しているものばかり(一話の竜馬と勇がなぜ知り合う話になったかetc.)で、正直、聞いている私自身に飽きがきてしまい、どういう質問で回答であったか、情けないほど覚えていません。ので印象に残って覚えている質問をいくつか御紹介するにとどめたいと思います。m(_ _)m)

Q:新選組の衣装について、ドラマの中で忠臣蔵の衣装を模して羽織を作ったというエピソードが出てきましたが、池田屋襲撃の時の衣装、今回のものは従来の作品に比べて重装備ですよね。これも前に出たエピソードを踏まえて、吉良邸討ち入りの火事装束を模すかたちで、今回ああいう風になったんでしょうか?

山村:これは違います。実際近藤や土方が使っていた遺品の防具が、何点か残されていてあちこちの資料館に収蔵されているんですが、それを見ると、鎖頭巾や鎖帷子があったりとかなりの重装備なんです。従来の映像では、見た目を優先して省いていたそれらのものを、今回きちんと描写したにすぎないんです。
青木:今回は、この防具を使って効果的な殺陣というのも取り入れています。
山村:え?!島田魁のこと?!
青木:それはネタバレですよ。(笑)

Q:東京・渋谷のNHKスタジオパークで、収録現場が見学できると聞きました。一度、見学に行きたいと思っているんですが、いったいいつまで、撮影をされているんでしょうか?

青木:まだ最終回の脚本が上がってないのではっきりとは解らないんですが、確実に九月末までは撮影をやっています。下手すると・・・十月上旬くらいまでは・・・でも、本当に解らないんです。(あ、当初の予定より、撮影延びているような感じだなぁ)

こたつむり(←!):今現在、何話までの脚本が上がっているんでしょう?
青木:それは企業秘密です。(早いな!)
こたつむり:ェエ工工゛っ!!!〜(思わず突っ込み)
山村:(笑)週に一度、脚本検討会議というものがあるんですが、脚本がそれに遅れたことは一度もありません。仕事柄、僕が一番先に脚本に目を通すことになるんですが、それが本当に楽しみで仕方がないんですよ。
青木:三谷さんといえば遅筆な方というイメージがありますが、今回の大河に限っては脚本が遅れたということが本当にないんですよ。毎週きちんと脚本が上がってきています。民放のプロデューサーさんに、『(三谷さんも)やろうと思えば、ちゃんと出来るんじゃないか』と言われました。(笑)
青木:あの、時間になりましたので、質問もこれくらいで・・・
客席中盤やや上手側にいらした先ほどの老婦人:あのう・・・まだわからんのですがぁ・・・あの、新選組も〜、浪士も〜、そんのーじょーいでしょう〜?(以下略、(^_^;ゞ高松の方は大らかで人好きのする人が多いですね)
青木:・・・山村さん、お願いします。(笑)
山村:・・・(ひたすら困っている、以下略)

という具合で、終始和やかに進んで無事終わりました。皆様、本当にお疲れ様でした!



前回のレポを書いて後、忘れていた部分を必至で思い出してみました。けれど、かなり曖昧です。こんな内容だったなーというだけで、仔細はすっかり忘れています。そこは十二分に割り引いて読んでください。

【無理やり思い出した質問コーナー】

Q:尊皇攘夷とは?長州も新撰組も尊皇攘夷なのになぜ争った?

A:尊皇攘夷を簡単に説明するのはとても難しいんですが、短くまとめると、天皇を敬い、外国の勢力を日本から追い払うこと、といえばいいでしょうか。あの時代の日本人は、最初、ほとんど全員がこの尊皇攘夷の考えを持っていたんです。天皇制を辞めさせようとか、積極的に外国と仲良くして、日本でも外国人が自由に行動できるようにしよう、と考えていた人はいなかった訳ですから。

Q:それなのにどうして争った?

A:それは、次第にお互いの考えが違ってきたからなんです。どういう風に違っていったかは、それぞれが属した所が違っていたのも大きいと思います。長州勢は元々は尊王・・・天皇を敬うであったものが、次第により天皇側へ傾斜した勤皇思想・・・将軍ではなく、天皇が政治の実権を握る、に変わっていきます。外国勢に対しても、力ずくで追い払え、と。その流れの末に現れたのが久坂玄瑞のような長州の過激派達ですね。そして、竜馬が師事したのは、外国に精通した勝海舟。当然、彼の影響を受けて、竜馬も開国思想を持っていった訳です。近藤勇・・・新選組ですが、彼等は会津藩・・・幕府に雇われていた訳ですが、幕府というのは一見、尊皇攘夷に見えて、そうではないんです。幕府の者にとっては、天皇よりも将軍の方が大切なのが本音ですし、攘夷にしても、外国勢を打ち払うのは不可能だから、より良いタイミングを見計らって、有利な条件で条約を結んで開国したいと思うように変わっていったんです。その考えの上に新選組もあった訳です。

Q:じゃ、元々同じ考えの者同士が争って、勝った方が官軍で負けた方が賊軍になったの?

A:そういうことです。

Q:第一回の黒船のシーンは、明らかにフィクションだが、どうしてドラマに挿入したのか?

A:あの三人が、黒船を観に行ったというのは、ドラマ上の創作ですが、まず、歴史考証の仕事としては、当時、あの三人が江戸で顔をあわせる可能性があったかどうかを調べることです。その可能性もないのに、あんなシーンを入れては、それこそ史実を捻じ曲げたことになりますから。そして、あの時、確実に桂と竜馬は江戸に勉学に来ていたんです。実際に顔を合わせていたかどうかは判りませんが、街角で互いにすれ違っていた可能性は、十二分にあります。三人が顔をあわせる可能性が少しでもあるのならと、あのシーンにGOサインを出しました。それというのも、今、勇と長州の桂小五郎とは敵対関係にあり、竜馬とも互いの考えに距離が出てきています。が、出会った当初の考え方に大きな違いはなかった訳です。そのスタート時点では、あまり違う思想を持っていたわけではなかったというのを、描きたかったんです。  あまり違わないところからスタートして、その後、様々な体験を経て、命をやり取りするまでに変わっていく。その変化を描く為には、まず、しっかりと『似たような考えを持っていた三人』を書く必要があったので、あえて一話で黒船の場面を入れました。

Q:沖田の愛刀・菊一文字はいつ出てくるの?

A:そもそも、菊一文字そのものを沖田は持っていません。沖田が所有できるような刀ではないんです。これは、新撰組を扱った小説を書いた方の創作ですね。小説やドラマを作るとき、歴史的事実だけで話を作ることはありまえせん。資料にも残っていない歴史の隙間というものもあります。こういったものは創り手が、想像を膨らませて話を創り上げていくしかないわけで、この創作部分がそれぞれの作品の持ち味になったりします。さらには、ドラマ的な演出効果を狙って、史実とは違ったことを書くこともあります。『沖田の愛刀は菊一文字』というのも、こういった課程で作り上げられたフィクションです。『新選組!』にも、この手のフィクションはあります。八木家の子供は、ドラマ上では娘さんと息子さんの姉弟ですが、史実では男ばかりの三人兄弟です。これも隊士、特に沖田と、設定を変えて娘にした『ひで』を絡ませて、よりドラマチックな展開にしたかったので、あえて史実ではない設定を採用しました。

・・・これで本当に終わりです。これ以上は逆立ちしても出てきませんので〜

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